イスラムの伝統医学(ユナニ医学)
   

 ユナニとは、ギリシャの植民地であったイオニアがなまった言葉であり、ユナニ医学とは本来ギリシャ医学です。 特に紀元前5世紀頃のヒポクラテスから始まり、ガレノスで頂点に達した四体液説(粘液、血液、黄胆汁、黒胆汁の四体液が人体を構成するという説)に基づいた病理観を基本としています。 そのギリシャ医学がエジプトを経てペルシャに伝えられ、アラビア語に翻訳されました。 それらの知識の上にラーゼスが「マイソールの書」(10世紀)を、アヴィセンナが「医学典範」(11世紀)を著すことで、ユナニ医学が確立されました。 さらには、ユナニ医学にイスラム教の考え方や生活様式も加わりながら、イスラム圏の伝統医学として広く普及していきました。  以下に紹介する治療法以外に、眼科的な外科療法(白内障手術)なども行われています。 食事(ザクロをふんだに使ったイランの食事) ユナニ医学では、体内の四体液をバランスさせることが、病気の治療と健康の維持増進に必要であると考えますが、食物の持つ「気質」(温性、冷性など)を考慮して食事をとることで、体液や気質のバランスがとれ、内なる治癒力が増進すると考えます。 薬草療法(生薬市場) 薬草も、四体液や気質のバランスをとる働きがあり、病気を癒すものです。 特にシャーベットと呼ばれる甘い液体製剤は、ユナニ医学の特徴的な剤形で、現代のシロップの語源となった言葉です。        

   

運動療法(ズルハネの風景(棍棒を投げ上げている)) イスラム圏の人々は、古来から運動によって体力を増進させて戦闘に備えていました。 ズルハネという形態が今も残っています。また、イランやトルコのオイルレスリングも同じ目的の運動療法と見なすこともできます。 泥浴(泥浴風景) ローマ時代のディオスコリデスは、泥の持つ治療効果に気づき、「ギリシャ本草」に収録しています。 ギリシャからトルコ、イランにかけて温泉や泥浴の施設が数多く存在し、現在でも人々の健康に役立っています。             

   

 
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